スタジオ「HIKARI」

The end of companyジエン社 番外公演 『わたしたちはできない、をする』

日程:2020/02/15〜2020/02/16まで
開場・開始: 2月15日(土) 13:00* / 17:00* 2月16日(日) 13:00 / 17:00
会場: スタジオ「HIKARI」
住所:神奈川県横浜市西区紅葉ケ丘9-1 神奈川県立青少年センター2階
カテゴリー:劇・ショー
出演者:
チケットの購入・お問合せ: https://elegirl.net/jiensha/

イベントの詳細

できないことを、できないままにしてしまって、
できると思っていたことは、どんどん遠ざかっていく。
一方で、それができてしまった時、わたしは、
できなかった頃のわたしに、二度と逢えないんだろうか。

× × ×


わたしたちはできない、をする。日々している。わたしたちはできない。できないのに、そこにいる。
できない人達による相互互助を目的としたこのセンターに、比較的年齢の若い人々が集まっていた。
仮にここを、「できない園」と名付けてみようか。

「できない園」は、本来は自由に居る事ができる。また本人の意志で、今すぐここから居なくなることもできる(基本的人権のため)。通いの人もいるが多くは住み込みで。自分のできなさを他の人に見せたり、見せなかったりしながら、そのできなさを、「できるようになる」か、「できなくてもいいようにする」か。
とにかく「この状態ではないよう」にするために集まり、ここにいる。

たとえば彼は、傘をさすことが出来ない。
たとえば彼女は、定食の小鉢を、バランスよく順番に、少しづつ、を食べる事が出来ない。
あそこにいるあの人は、歌を歌うことはできないが、『身内相手に米津玄師の歌を歌う』ことはできる、という。
そして遠くいるあの子は、彼氏が出来ない。彼氏が出来なくて、彼氏の作り方を尋ねたり、調べたり、ここで、毎日。そのうち、何もしなくなり、施設内でもっとも日の当たる、あの場所に、ただ居るようになった。

 今日はその場所に、佐藤君がいた。

「できるようになりましたか?」
「……ないです」
「ない?」
「ないです」
「できることが?」
「嘘、つく必要ないじゃないですか」

 わたしが担当している佐藤君は、よく「ないです」と言う。
(ちなみに佐藤と言うのもあだ名で、ここでは皆に特に名前を言う必要ないから。正直誰が誰だか、本当にその名前が正しいのかすら分からない。ハンドルネームみたいな奴もいる。なんたら帝国、とか)
 彼は、さまざまな事ができない。それを佐藤君自身は、わかっているのかどうか。彼を「複合型のできなさ」とも言う人がいるがそれ、誰が言っているんだか。

 わたしはそのできなさに対し、できるようにさせるような資格も技術もない。ただ週に一度、彼の話を聞き、報告書を作る。そして上の人……上の人って誰だ……? 誰にかわからないが、わたしの書いたレポートは、誰かに読まれる。
 だが、彼の話を聞くのは難しい。会う事だってできない事が多くて。何週か「面談実施せず」の報告が続き、そろそろ報告書をまとめたいと思っている。

「ないです」
何がないの?
「ないです」
それはなにが? できることが?

佐藤は不意に立ち上がり、わたしには出来ないような綺麗な早足で、日の当たる場所から去った。

待って。

声をかけようとするけど、それはできない。わたしにはできない人に、待てと命令する権限はない(基本的人権があるため)。

じゃあ、わたしはどうすれば、佐藤君から、佐藤じゃないかもしれない君から、話を。
なんの話を?

わたしは、佐藤君かもしれない人と話をすることが、まだできない。



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